1月にアップデートしたI'meのイベント第1弾は、1月24日に開催された『ゲスト講師勉強会』。記念すべき初回ゲストとしてご登壇くださったのは、なんと87歳の現役美容家、小林照子先生。
照子先生はメイクアップアーティストになる夢を持って化粧品会社に就職。「売れるかどうか」ではなく「自分が欲しいものを創り出せば、世の中の女性も喜んでくれる」という視点で商品開発を手掛け“世界初”となる美容液やパウダーファンデーションを誕生させた方です。
50歳で初の女性取締役に就任され、56歳で起業。58歳でメイクアップアカデミーを設立。世界に通用するトータルビューティのプロを数多く育成されています。
また75歳で高校を設立されたほか、83歳で未来の女性リーダーを発掘・育成する私塾も開講。今なお意欲的に挑戦を繰り返し、現役で活躍されている照子先生に「40歳からの女性の選択」についてお話しいただきました。
とんでもない。そんな考えは1ミリもなかったです。取締役は“戸締り役”かな、くらいに思ってましたから(笑)
当時は今よりもっともっと男性中心の社会。女性が会社の役員になるのは、新聞に載るくらい珍しい時代でしたし、興味もなかったです。
20代の頃は、メイクアップアーティストになりたいという「自分の夢のため」に仕事をしていました。会社から与えられた仕事に、自分の夢をバッチリ乗せていたんです。だから、他のどの美容部員よりもお客様にメイクをしました。商品を売るとういう意識はなかったけれど、それが結果的に売り上げにもつながりました。
30歳の時に「会社のために働こうと」意識が変わる出来事がありました。
当時私は0歳児を抱えて働いていましたが、香港での仕事を任されることになり、子どもを預けて1カ月香港に行こうと思っていたんです。
ところが羽田に向かう車にトラックが突っ込んできて、同乗していた家族が重傷を負うという事故が起きました。当然香港には行けなくなったので、関係する方々や会社に多大な損失を与えてしまった…。これからは会社のために働こうと思いました。そう思ったらヒット商品がバンバン出るようになって。30代、40代は会社に貢献したと思います。
ひとつ成功しただけではなかなか認めてもらえないので、成功は3つぐらい続ける必要があります。特に女性は。1つや2つじゃ「偶然だ」とか、「仲間が頑張ったからだ」とか言われてしまう。認められるには、数が必要なんですよ。
私、認めてもらおうとは思ってないから。
自分が欲しいと思うものを、創り出すことができる組織の中にいて、無理難題を叶えてくれる優秀な研究者がいて、自分が欲しかったものができて、世の中の女性が喜んでくれることが嬉しかったんです。
みんな上司をどうやって攻略するかばっかり考えているけどそれは意味がないこと。私は横、仲間を観ていました。良い商品ができたら、全国に51人いる美容課長たちにまずモニターになってもらう。「これいいな」って思ったら、各地域で4000人の美容部員たちに「すごいのができるよ」って伝える。美容部員たちも「これいいな」って思ったら、発売前に既に4000人のファンがいるわけですよ。
美容液を発売するときも、上層部は「売れるわけがない」と反対していたけれど、私は待っている女性たちがいると信じて押し切った。そうしたら、発売と同時に品切れになり、大ヒット。売れる商品になったら、上層部の態度も変わりますよね。
舞台や映画の世界がどんどん発展していく中で、メークアップアーティストも大勢必要になってくるので、会社を辞めて学校を作りたいと思うようになりました。
45歳の時に辞めたいと思ったのだけれど手放してもらえず、逆に「何をやりたいのか?」と聞かれたので「学校を作りたい」という夢を話しました。
そうしたら、48歳の時に会社が学校を作ってくれて、私の夢は会社にいながら叶いました。
取締役は何の興味もないので、一度は辞退しました。でも、あなたの後ろには、4000人美容部員たちがいるんだと言われて、6年間役員をやりました。
役員になって良かったと思うの「人は第一印象が一番大事」だということが分かったこと。役員が集まって社員の話をするときに、必ず出てくるのがその人の「面接のときの印象」だったんです。「あの時のあの学生が部長になるのか」とか、「あいつがこんなに早く課長になるとは意外だった」とか。
ずっと「人の印象」を研究してきたことが、会社のためにもなったけれど、これは社会のためにもなることだから、もっと社会に伝えてあげたいと思ったんです。
それで、大手企業の美容コンサルタントや商品開発、教育のお手伝いをする仕事で起業して、2年後に私費をつぎ込んでメイクアップの学校を設立。75歳で高校も作りました。
点を打った人は、点(今)ではなくて、線(未来)を考えています。線ができたら、そこに思想(面)を作っていく。思想(面)を作るとなんでもできるんです。
75歳で高校を創る時に「いつまで生きていられるか分からないのに」と反対する声もあったのですが、私が生きていなくてもいいんです。
点を打った人は、もっと未来の先まで考えています。私の人生で、それはなし得ないかもしれないけれど、点を受け継いでくれる人、つまり後継者が出てきてイズムは継承されます。でもイズムは時代とともに、変わっていかなきゃおかしいとも思っています。
大切なのは“使命”を持つこと。
自分の使命は何かを深掘りしてほしいです。過去の経験の中に全部意味があると思ってください。
年齢を重ねることをマイナスに思う人もいるかもしれないけれど、40代、50代こそ世の中の信頼は高まるんです。
メイクアップの学校でも、覚えの早い20代の生徒より、39歳で入った生徒が、信頼されたりするんですよ。
そのためには、年齢なりの知性や美しさを持っていることが大切です。
もう一つ大切なのは、女友達を持つこと。
女性には母性があるから愛があるんです。
「精神科の医者にかかるよりも女友達を持った方がいい」という研究結果もあるくらい、おしゃべりを聴いているだけで癒されるものです。
私にも30年来、毎月のように会っている友人が4人います。
女友達との関係を長く持続させる秘訣は“オール割り勘”ですよ。
言葉にしたことは、必ず実現します。「こうなりたい」と思うことは必ず言葉にしてください。言霊(ことだま)ってあるんです。ただ言うだけでなく、文章にする、絵に描く、人に言いふらす・・・これが実現を早めるんです。
人に言っちゃったと思えば自分も頑張るし、聞いた人は「あの人はああいう道を目指しているらしいから、この人とつなげようかな」とか思ってくれる。だから実現が早くなるんですよ。だから私、50代ぐらいから言ったことは全部実現しているのよ。
■こんな素晴らしいお話を聞けるとは、本当にアイミーに入っていて良かった、そんな想いで聞いていました。
女性のライフステージの変化で必ずしも企業などの組織で働けなくても、別のやり方や形態で社会に貢献できることを、私たち女性自身が諦めちゃいけないんだなと感じます。
女性たちが成し得た成功事例や影響をどんどん社会に共有していくことで、女性が働く環境の改善とか、女性が子どもを産むモチベーションになったりするんじゃないかな。
■照子先生のこれまでのご経験(ストーリー)を聞いているだけでも学びでいっぱいでしたが、数多くあるキーワードの中から特に心に残ったのは
・成功は3つ続ける必要がある(特に女は)
・上ばかり見るのではなく、横を見る
・これまで生きてきた自分の経験全てが武器になる
でしょうか。まだまだあるけれど内緒。
質問タイム中に感極まり泣いてしまう方もいたり、なんだか不思議だけれど、これからの時代を生きるパワーを貰うことができました。
■今回、照子先生のお話を聞いて、私の今までの経験を活かせるよう考えたらいいのだ!と思えました。